子どもの発音
子どもの発音
生まれたばかりの子どもはまだ言葉を理解することも、話すこともできません。人とかかわることで物と言葉を結び付けていき、少しずつ言葉を学んでいきます。また、大人の話し言葉を繰り返し真似することで、少しずつ発音も学んでいきます。成長に伴い唇・舌・歯などの“話し言葉に関わる器官”が発達し、意識せずに動かせるようになると大人と同じように話せるようになります。
話しことば(発音)の発達は、おおよそ一定の決まった順番ですすんでいきます。
4歳代まで:母音(ア・イ・ウ・エ・オ)、パ行、バ行、マ行、ヤ行、タ行(ツ以外)、ダ行(ヅ以外)、カ行、ガ行、ワ行、ナ行、ハ行
5歳代以降:サ行、ザ行、ラ行、ツ、ヅ
子どもの話し方が気になる場合や、聞き取りにくい音がある場合には、例えば以下のようなものがあります。
このような発音の誤りが起こる原因はいくつか考えられます。
ひとつは、発達の途中である場合です。発音には発達の順番があるため、たとえば2歳の時点ではまだうまく言えない音があることが多いです。この場合は、成長とともに少しずつ正しい発音ができるようになります。
もうひとつは、発音方法を間違えて覚えてしまっている場合です。小学校入学前や入学後、大人になっても言えない音があると相談に来られる方がよくいらっしゃいます。この場合は、正しい発音ができるようになるためのリハビリテーションが必要になります。
「うまく言えない言葉がある」と相談に来られる人の中には、検査で難聴が見つかる場合があります。子どもは、周囲の人の言葉を聞いてマネをしながら言葉・発音を覚えていくため、言葉・発音の発達には「聞こえ」がとても大切です。耳が聞こえにくいと音が違って聞こえるため、正しい発音が難しくなります。
当院では、発音の相談で来られた方には聴力検査を実施しています。気になる方は診察の際にお声がけください。
何らかの原因があって、うまく言葉を発することができない状態のことをいいます。
大きく「形に問題がある場合」「運動に問題がある場合」「何も問題がない場合」の3つにわけられます。
病気やけがによって、発音に関わる器官の形が異なってしまうことで、うまく言葉を発することができない状態を言います。医学的には「器質性構音障害」と呼ばれています。生まれた時から口の天井部分が開いている“口蓋裂”や、舌がんの手術で舌の一部がなくなりうまく動かせなくなること等が、これにあたります。
発音に関わる器官をコントロールしている神経に異常が起こった結果、舌や口を思い通りに動かせなくなり、うまく言葉を発することができない状態をいます。医学的には「運動障害性構音障害」「ディサースリア」などと呼ばれています。脳卒中やパーキンソン病などの病気がきっかけでうまく話せない場合がこれにあたります。
形や運動に問題がないのに、うまく言葉を発することができない状態です。医学的には「機能性構音障害」と呼ばれています。発音の相談に来られた場合、まずは診察で形や運動に問題がないかを確認します。どちらも問題がないと判断された場合に、「機能性構音障害」と診断されます。
例えば、以下のような発音の誤りが起こります。これらの中には、発達の途中で起こる誤りもあります。
「さかな」→「たかな」など、発音する際に他の音に置き換わっているものをさします。この場合は、/sakana/→/takana/になっているため、sがtに置き換わってしまっています。
「さかな」→「あかな」など、発音する際に音が省かれてしまっているものをさします。この場合は、/sakana/→/akana/になっているため、sがなくなってしまっています。
特定の音を話す際に、日本語では表すことが難しい音に変わってしまっている状態をさします。
通常とは異なる発音の方法をしている状態をさします。この場合は成長とともに改善される誤りではないため、大人になっても言えない・言いにくい音がある状態になります。発音の改善には、長期的なリハビリテーションが必要になることが多いです。
代表的なものに、以下のようなものがあります。
日本語の音には、舌の先を使うものと舌の奥を使うものがあります。タ行・ダ行などの舌先を使う音が、カ行・ガ行など舌の奥を使う音に変わるといった誤りは、口蓋化構音でみられることが多いです。
発音の際、多くの音は口の中心から息が出ています。口の中心以外から息が出てしまっていたり、片方の唇を横にひきながら話す様子が見られたりする場合、側音化構音が疑われることがあります。
発音の際、多くの音は口から息が出ていますが、一部鼻からも息が漏れる音が存在します。例えばマ行、ナ行などです。一方で、鼻から息が漏れないはずの音で鼻から漏れてしまっている場合、鼻咽腔構音が疑われることがあります。
お子様の話しことば(発音)に関する相談のうち、多いのが「子どもの発音が違う場合は、その都度指摘や言い直しをさせたほうがいいのか」といった質問です。
話しことば(発音)が気になっている場合、ついつい注意をしたくなる気持ちはよくわかります。
しかし小学校入学前~入学後のお子様にとって、今はいろんな言葉を覚えることや、人とコミュニケーションをとることがとても重要な時期です。今日の楽しかった出来事や思ったこと・発見したことを伝えたいのに、その都度注意をされてしまうと、話すことが嫌になるお子様もいるかもしれません。
話しことば(発音)の発達には、なによりも“たくさん話すこと”がとても大切です。まずはお子様の「話したい!」「伝えたい!」という気持ちを大事にしてあげてくださいね。
大人と同じように話せるようになるためには、唇・舌・歯などの“話し言葉に関わる器官”が発達し、意識せずに動かせるようになることが大切です。そのため、まだ発達の途中である1~3歳のお子様には、話し言葉(発音)の訓練はできません。
ですが、幼いうちから話し言葉(発音)のために、ご自宅でできることはあります。それは“ご飯を食べること”です。
ご飯を食べているときの口の動きを確認してみましょう。まず、食べ物を口の中に入れたら『唇』を閉じ、そして『歯』で噛みます。その際、上手に噛めるように頬や『舌』で食べ物を広げていきます。しっかり噛めたら、『舌』でかき集めてから、『舌』でのどに食べ物を送り込んでいきます。このように、ご飯を食べるときには『唇』『歯』『舌』がとても重要な働きをしています。
次に、言葉を話すときの口の動きを確認してみましょう。例えば「ま」や「ぱ」を言うときには、上下の『唇』を動かしています。「た」と言うときには『舌』の先を上の『歯』の後ろに当てています。そのため、舌先が上の歯に当てられないように口を大きく開けてしまうと、「た」と言うことは難しくなります。このように、言葉を話すときにも『唇』『歯』『舌』がとても重要な働きをしていることがわかります。
話し言葉と食事は、どちらも『唇』『歯』『舌』を使うことが大切です。そのため、口を閉じてよく噛んで食べることは、発音の発達にとてもいい影響を与えます。
「うまく言えない言葉がある」と相談に来られた際に、保護者の方にお子様の食事についてお聞きすると、食べるときに口を開けたまま食べている・柔らかいものばかり食べる・よく噛まずに食べている等と話される保護者の方が多いです。お子様の話し言葉(発音)が気になる場合は、一度お子様の食べる様子を見てみましょう。もし口を開けたまま食べていたりよく噛まずに食べているようであれば、声掛けをしたり、大人が見本を見せたりしてみてくださいね。
また、以下のような舌の動きの練習になる動作を、ご自宅でやってみるのもおすすめです。
お子様の様子をみて、難しそうであれば無理には行わないようにしましょう。
食事以外にも、日常的に口や舌の運動をすることは可能です。少し大きくなってきたらできるようになる、口を使った遊びをいくつかご紹介します。
吹いても吸っても音が鳴るようなものであれば、吸う感覚と吹く感覚を楽しくつかむことができます。
息の吹き方を変えながら、いろんなシャボン玉を作って遊んでみましょう。
息を吹いて、どこまでティッシュペーパーを遠くに飛ばせるかチャレンジしましょう。
コップに水を入れてストローで吹くと、泡がぶくぶくできてきます。
息をたくさん吹いて最後まで伸ばせるか、遊んでみましょう。
グーチョキパーの形を決めて、一緒に遊びましょう。
お子様が楽しめるものがあれば、無理のない範囲でぜひ一緒に遊んでみてくださいね。
話しことば(発音)の発達には、「まわりの大人の口の動きを見て学ぶ」ことも大切です。ご自宅でお子様と話す際は、顔を合わせる機会をつくってみてくださいね。
まずは当院を受診し、診察の際に医師にご相談ください。医師の診察と言語聴覚士による評価により、発音の問題に焦点を絞って練習することが適切と判断された場合にリハビリを開始します。症状によってはリハビリの対象とならない場合がありますのでご了承ください。
2024/6/1~予約料1100円が必要になります。
予約料については、近畿厚生局により運営上適正であると認可を受けて実施しております。
ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご了承ください。